背水の陣とは?由来や書き下し文と現代語訳もチェック!
「背水の陣で頑張る」
もう後がない状態でがんばる場合に、
このような言い方をすることがあります。
必死の覚悟や決意表明のようなイメージがありますが、
本来はどんな意味なのでしょうか。
「背水の陣」というと、戦をイメージしますが、
どのような話が元となったことばなのでしょうか。
と、いうことで!
今回は「背水の陣」の意味や使い方、言葉の語源についてまとめました。
もとの漢文の書き下し文や現代語訳もチェックしていきましょう。
背水の陣の意味
まずは、基本的な意味からみていきましょう。
- 背水の陣の意味
失敗すればもう後がないという、一歩も引けないような切羽詰まった状況で事に当たることのたとえ。
だいたいイメージしていた通りの意味ですね。
(^^ゞ
「背水」というのは川や湖、海などを背にした状況のこと。
退却すれば水に溺れてしまうことを意味しています。
そしてそんな切羽詰まった場所にあえて陣を立てることで、
一歩も退くことができない絶体絶命の状況
に自分を追い込み奮い立たせるという意味があります。
つまり、
「背水の陣で事に臨む」や「背水の陣で頑張る」というのは、
後には引けない状況に身を置いて、必死の覚悟で物事に取り組むという意味となります。
由来について
「背水の陣」は中国前漢の時代に編纂された歴史書
「史記」
に記されている、漢の名将である韓信(かんしん)が、
趙(ちょう)の軍と戦ったときの話がもとになっています。
安全な砦ではなく、一歩も引けない絶体絶命の状況に追いやられることで
兵たちは死に物狂いで戦闘し、趙の軍を打ち破った。
これがざっくりとした背景となります。
では本来はどんな文章だったのか。
書き下し文と現代語訳を見ていきましょう。
書き下し文
まずは書き下し文からみていきましょう。
- 未だ井陘(せいけい)の口に至らざること三十里にして止まり舎す。
夜半に伝発し、軽騎二千人を選び、人ごとに一赤幟(せきし)を持ち、
間道より山に萆(かく)れて趙の軍を望ましむ。
誡(いまし)めて曰はく、
「趙我が走(に)ぐるを見るや、必ず壁を空しくして我を逐はん。
若疾く趙の壁に入り、趙の幟を抜き、漢の赤幟を立てよ。」と。
其の裨将(ひしょう)をして飧を伝へしめて曰はく、
「今日趙を破りて会食せん。」と。
諸将皆信ずる莫けれど、詳(いつは)り応へて曰はく、
「諾。」と。
軍吏に謂ひて曰はく、
「趙已に先(ま)づ便地に拠り壁を為(つく)る。
且つ彼未だ吾が大将の旗鼓を見ざれば、未だ前の行を撃つことを肯(がへ)んぜざらん。
吾阻険(そけん)に至りて還(かへ)らんことを恐るればなり。」と。
信乃ち万人をして先行し、出でて水を背にして陳せしむ。
趙の軍望み見て大いに笑ふ。
現代語訳
次に現代語訳をチェックしていきましょう。
韓信は夜中に伝令を出し、軽騎兵二千人を選び、
どの兵にも一つ赤いのぼり旗を持たせて、
抜け道を通って山に隠れて趙の軍を遠くから伺うようにと言いました。
韓信が兵に戒めて言いました。
「趙の軍は、我々が敗走するのを見たら、必ず砦を空にして我々を追ってくるだろう。お前たちは素早く趙の砦に入って、趙の旗を抜き、代わりに漢の赤いのぼり旗を立てなさい」と。
韓信は副将軍に軽い食事を配らせて言いました。
「今日、趙を打ち破って会食することとしよう」と。
どの将軍も皆、韓信の言葉を信じる者はいませんでした。
しかし、本心を偽り答えて言いました。
「承知しました。」と。
韓信は軍吏に伝えて言いました。
「趙はすでに、先に戦いに有利な土地を占拠して砦を築いている。その上、彼らは我が軍の大将の旗や太鼓を見ていないので、まだ我々の先行した軍を攻撃することを良しとしないだろう。なぜなら私が険しい所にきて逃げ帰ることを恐れているからである」と。
そして韓信は、一万の兵を先行させてから井陘の入り口を出て、川を背にして陣をしかせました。
趙の軍はこれを遠くから伺い多いに笑いました。
「史記」の「背水之陣」によれば、韓信が考えた川を背にして陣を立てる。
という作戦を見た趙の軍は馬鹿にして大いに笑います。
しかし、結果として死ぬ物狂いで戦った韓信に敗れてしまいました。
どのようにして勝利を収めたかは「十八史略」に記されている「背水之陣」に載っています。
韓信は先行させた部隊には敵の砦の旗を抜いて、
漢の赤いのぼり旗を立てるように言いました。
そして自分たちは趙の軍の主戦力をおびき寄せて川を背に戦います。
死に物狂いで戦う兵たちに敵わない趙の軍は一旦、砦に逃げ帰りますが、
そこには漢の赤いのぼり旗が立っていたので、
「砦も制圧されてしまった!」
と思った趙の軍は逃げ出して散り散りになってしまいました。
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まとめ
今回は「背水の陣」の意味や使い方、言葉の語源について紹介しました。
「背水の陣」の語源は中国前漢の時代にまで遡ります。
韓信と趙の軍が戦ったときの韓信が考えた作戦がもとになっています。
先行の軍にのぼり旗を取り替えたり、敵を騙したりと
若干卑怯な手のようにも感じてしまいますよね。
(^^;
ただ、川を背に陣を立てて、兵を奮い立たせなくては成立しない作戦なので、
人の心理をよく読んだ秀逸な戦略といえます。
実際には、人の性格や性質にもよりますが、
「切羽つまらないとなかなか行動しない。」
という場合は、背水の陣で事の挑んでみてはいかがでしょうか。
今回は以上です。
ご参考になりましたら幸いです。
(*゚ー゚*)ノ
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