鶏鳴狗盗の現代語訳!意味や書き下し文も
「鶏鳴狗盗」
こんなお話しがあります。
漢字が難しくて「ナニコレ?」状態になってしてしまいそうですが
「けいめいくとう」
と読みます。
文字をそのまま読むと、
よく分からないですよね。
なんだか混沌とした状況に思えます。
どんな意味を持つ言葉で、
どんなストーリとなっているのでしょうか。
また何が由来となってできた言葉なのでしょうか。
と、いうことで!
今回はこの四字熟語の意味や使い方、
「鶏鳴狗盗」はなにをあらわしているのかをまとめてみました。
由来
「鶏鳴狗盗」というのは、司馬遷によって編纂された中国の暦書である、
「史記 孟嘗君伝」
に記されています。
では実際の漢文と、その書き下し文、現代語訳を見ていきましょう。
原文
- 靖郭君田嬰者、斉宣王之庶弟也。封於薛。
有子曰文。食客数千人、名声聞於諸侯。号為孟嘗君。
秦昭王聞其賢、乃先納質於斉、以求見。
至則止、囚欲殺之。
孟嘗君使人抵昭王幸姫求解。姫曰、
「願得君狐白裘。」
蓋孟嘗君、嘗以献昭王、無他裘矣。
客有能為狗盗者。入秦蔵中、取裘以献姫。
姫為言得釈。
即馳去、変姓名、夜半至函谷関。関法、鶏鳴方出客。
恐秦王後悔追之。客有能為鶏鳴者。鶏尽鳴。
遂発伝。
出食頃、追者果至、而不及。
孟嘗君、帰怨秦、与韓魏伐之、入函谷関。秦割城以和。
うう。。
漢字ばかりでイヤになってしまいますね…。
もう少し読みやすい書き下し文をみてみましょう。
書き下し文
靖郭(せいか)君田嬰(でんえい)は、宣王の庶弟なり。
薛に封ぜらる。
子有り文と曰ふ。
食客数千人。
名声諸侯に聞こゆ。
号して孟嘗君と為す。
秦の昭王、其の賢を聞き、乃ち先づ質を斉に納れ、もって見んことを求む。
至れば則ち止め囚へて之を殺さんと欲す。
孟嘗君人をして昭王の幸姫に抵(いた)りて解かんことを求めしむ。
姫曰く、
「願はくは君の狐白裘を得ん」
蓋(けだ)し孟嘗君、嘗て以て昭王に献じ、他の裘無し。
客に能く狗盗を為す者有り。
秦の蔵中に入り、裘を取りて姫に献ず。姫為に言ひて釈さるるを得たり。
即ち馳せ去り、姓名を変じて夜半に函谷関に至る。
関の法、鶏鳴きて方に客を出だす。秦王の後に悔いて之を追はんことを恐る。
客に能く鶏鳴を為す者有り。鶏尽く鳴く。
遂に伝を発す。
出でて食頃にして、追う者果たして至るも、及ばず。
孟嘗君帰り、秦を怨み、韓魏と之を伐ち函谷関に入る。秦城を割き以て和す。
現代語訳
さて。
では、肝心の意味についてみてみましょう。
子どもがいて、その子の名前は文と言いました。
食客は数千人にのぼり、その名声は周りの国にも届いていました。そして彼は孟嘗君と呼ばれていました。
秦の昭王は、孟嘗君の賢明さを耳にし、まずは斉の国に人質を送り、孟嘗君に面会を申し入れました。
孟嘗君が秦にやってくると昭王は孟嘗君を国に引き止めて殺そうとしました。
孟嘗君は人を照王のお気に入りの女官のところに遣わして、解放してもらえるように頼ませました。
その女官は、
「あなた様の狐白裘をもらえたのなら考えてもいいわよ」と言いました。
実は孟嘗君は、持ってきた皮を照王にあげてしまい、他の皮は持っていませんでした。
ですが、食客の1人に犬のようにすばしっこく盗みがうまい者がいたので、皮を蔵に忍び込んで皮を盗ませそれを女官にあげました。
女性は皮を貰えたので、照王に進言し孟嘗君たちは釈放されました。
孟嘗君は釈放されるとすぐに逃げ出し、名前を変えて夜に関所にやってきました。
関所では朝に鶏の鳴いた時間から人々を通す決まりになっていました。
孟嘗君は、秦の王が自分たちを釈放したことを後悔し追ってくることを恐れています。
食客の1人に鶏の鳴きまねがうまい者がいました。
彼が鶏の鳴きまねをすると関所の鶏たちも一斉に鳴き始めました。
それにより関所が開き脱出することに成功しました。
彼らが関所を出発してからまもなくして、追っ手がやってきましたが、追いつくことはありませんでした。
孟嘗君は帰国してから秦をうらみ、韓・魏とともに秦を攻めて函谷関に入りました。
そして秦は町を分割して和平を結ぶこととなりました。
ポイント
少し長い文章なので「結局何が言いたいの?」と思うかもしれませんが、「鶏鳴狗盗」は犬のようにすばしっこく盗みの上手い部下と、鶏の声マネが上手い部下のことを指しているんですね。
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鶏鳴狗盗の意味
「鶏鳴狗盗」というのは、小策を弄する人や、くだらない技能をもつ人、つまらないことしかできない人のたとえです。
また、つまらないことでも何かしらの役に立つことがある、という意味でも使います。
「鶏鳴」は鳥の鳴きマネをすることで、「狗盗」は犬のように卑しく、わずかなものを盗むことや人をあざむくことを意味します。
どちらも下らない能力やつまらない特技ということなんですね。
解説
「鶏鳴狗盗」があらわしているところの、鳥の声マネも、卑しい犬のような盗む能力も、下らなくつまらないものです。
しかし漢文の逸話を見てみると、そのつまらないものが命を助け、役に立った例が載っています。
この逸話から「鶏鳴狗盗」のもう一つの意味である
「つまらないことでも何かの役に立つことはある」
という意味が生まれたのでした。
小説に使われることもあり、有名なところだと中里介山の「大菩薩峠」に 「鶏鳴狗盗」を使った一文が出てきます。
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まとめ
今回は「鶏鳴狗盗」の元となった漢文の紹介や、意味や使い方をまとめてみました。
小策を弄する人や、くだらない技能を持つ人をあらわす言葉であり、また、つまらないものでも何かの役に立つという意味もあるんですね。
文字だけ見てもピンとこなかったですが、実際に漢文を読んでみると状況が分かりやすく、意味を掴みやすいですよね~。
漢文を一から読み解いていくと、お話が頭に中に入ってしまうので一度覚えたらなかなか忘れないというのも利点です。
最近は活字離れが進んでいますが、過去の作品には面白い物語や逸話がたくさんあります。
機会があれば、こうした先人の話にも耳を傾けたいものですね。
今回は以上です。
ご参考になりましたら幸いです。
(*゚ー゚*)ノ
タグ:漢文
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